「訪問鍼灸と訪問マッサージ、どう違うの?」「自分に合うのはどっち?」 そんな質問を受けることがよくあります。どちらもご自宅や施設で施術を受けられる在宅医療の一種ですが、目的・アプローチ・効果の方向性が異なります。
この記事では、大阪市住吉区のはりきゅう院 歩、院長の福家が、国家資格を持つ施術者として、両者の違いや選び方を専門的な視点からわかりやすく解説します。訪問鍼灸を検討している方、また介護・医療従事者の方にも参考になる内容です。
訪問鍼灸とは?痛みやしびれの根本改善を目指す在宅医療
訪問鍼灸は、通院が難しい方のために国家資格を持つ鍼灸師がご自宅や施設へ訪問し、医師の同意書のもとで保険を使って施術を行う医療サービスです。 対象となるのは、神経痛、腰痛、関節のこわばり、手足のしびれなど、慢性的な痛みや可動域制限がある方です。
鍼灸施術は、筋肉や神経、経絡(けいらく)の流れに直接アプローチするため、マッサージよりも深部の血流改善・神経調整・自然治癒力の回復に優れています。 特に、痛みや麻痺、しびれの原因が神経や循環の滞りにある方に効果を発揮します。
私はこれまで、脳梗塞の後遺症で片麻痺が残る方や、リハビリ後も関節拘縮が取れない方など、多くのご自宅・施設へ訪問してきました。 鍼灸の刺激で筋肉が柔らかくなり、「着替えが楽になった」「寝返りがスムーズになった」といったお声をいただくことが多いです。
訪問マッサージとは?リハビリを補助する身体機能維持ケア
一方の訪問マッサージは、あん摩マッサージ指圧師(国家資格)が訪問し、主に筋肉や関節を中心に「もみほぐし」「ストレッチ」「関節運動」などを行う施術です。 目的は、血流を促し、関節拘縮や筋萎縮を防ぎながら、寝たきりの方や運動機能が低下している方の身体機能を維持・改善することです。
リハビリに近い要素を持ち、介護施設などでは歩行訓練や座位保持訓練を併用することもあります。 筋肉や関節のこわばりが強く、「動かさないと固まってしまう」という方にとって有効な方法です。
訪問マッサージも、医師の同意書があれば保険が適用されます。 しかし、鍼灸と違い、ツボや経絡への刺激を目的とした治療的アプローチは含まれません。
訪問鍼灸と訪問マッサージの違いを比較
| 項目 | 訪問鍼灸 | 訪問マッサージ |
|---|---|---|
| 施術者 | はり師・きゅう師(国家資格) | あん摩マッサージ指圧師(国家資格) |
| 主な目的 | 痛み・しびれ・慢性症状の改善 | 筋肉のこわばり・関節拘縮の緩和 |
| 施術内容 | 鍼・灸によるツボ刺激、血流・神経調整 | もみほぐし・ストレッチ・関節運動 |
| 対象となる方 | 神経痛・麻痺・腰痛・慢性疼痛 | 関節拘縮・筋緊張・寝たきりなど |
| アプローチの深さ | 身体の深部や神経まで刺激が届く | 表層筋や関節可動域の維持が中心 |
| 期待できる効果 | 痛み軽減・自律神経の安定・睡眠改善 | 可動域維持・褥瘡予防・浮腫軽減 |
実際の現場での違い(院長の福家の経験から)
私が現場で感じる最も大きな違いは、「目的」です。 訪問マッサージは「身体を動かすサポート」、訪問鍼灸は「身体を整えるサポート」と言えます。
たとえば、腰痛が長年続き、寝返りのたびに痛みで目が覚めてしまう80代の男性。 マッサージではその場の筋肉の緊張は和らぎますが、翌日には痛みが戻ってしまうケースがあります。 一方、鍼灸では筋肉の深部や神経の興奮にアプローチするため、数回の施術で痛みの質そのものが変わることがあります。
また、脳梗塞後の麻痺や神経障害性疼痛など、神経の興奮が原因の痛みに対しては、鍼灸の方が効果が出やすい傾向があります。 これは、ツボ刺激が神経系に直接作用し、神経伝達を整える作用があるためです。
よくある質問(Q&A)
Q. どちらを選べばいいの?
痛みやしびれ、神経のトラブルがある場合は訪問鍼灸、関節拘縮や筋力低下、リハビリ目的なら訪問マッサージがおすすめです。 両方を併用するケースもありますが、同一部位への重複保険請求はできません。
Q. 鍼は痛くないですか?
使用する鍼は髪の毛ほどの細さで、ほとんど痛みはありません。 刺激の強さも患者さまの体調に合わせて調整しますので、安心して受けていただけます。
Q. どのくらいの頻度で受けると良いですか?
慢性症状の場合、週1〜2回のペースで行うと効果的です。 痛みの強い時期は短期間集中的に行い、安定してきたら間隔をあけて維持ケアを行います。
訪問鍼灸を選ぶメリット
- 神経・筋肉・血流・自律神経に総合的にアプローチできる
- 薬に頼らず、副作用のない自然療法
- リハビリでは届かない深部の硬さを改善できる
- 痛み・しびれ・冷え・不眠など多面的に対応可能
- 継続することで、生活動作(立つ・歩く・着替える)の改善が見込める
また、当院では医師・ケアマネジャー・ご家族との連携を大切にしています。 訪問記録を共有し、症状の変化や施術内容を明確に報告することで、安心して継続できる体制を整えています。
まとめ
訪問鍼灸と訪問マッサージは、どちらも「通院が難しい方」を支える重要な在宅ケアです。 しかし、目的や効果の方向性が異なります。
- 訪問マッサージ:動かす・維持するためのサポート
- 訪問鍼灸:整える・回復させるためのサポート
どちらが適しているか迷う場合は、症状の原因に注目して選ぶことが大切です。 神経・血流・姿勢の乱れが関係する場合は、訪問鍼灸を選ぶことで改善の可能性が広がります。
当院の想い
はりきゅう院 歩(あゆみ)では、痛みをとることだけを目的とした施術ではなく、「動ける身体」「疲れにくい身体」を取り戻すためのサポートを行っています。
訪問鍼灸は、通院が難しくなった方にとって「身体のケア」と「心の安心」を届けられる大切な施術のかたちです。 少しでも身体が動かしやすくなり、介助や生活が楽になることで、その人らしい日常を取り戻してほしいと願っています。
症状の改善だけでなく、ご本人・ご家族・介護に関わる方々の笑顔が少しでも増えるように。 これからも一人ひとりの暮らしに寄り添い、地域の中で安心して過ごせるようお手伝いを続けてまいります。
大阪市住吉区のはりきゅう院 歩、院長の福家として、これからも皆さまの「歩み」を支える存在でありたいと思っています。