〒558-0046 大阪府大阪市住吉区上住吉1丁目1−26
平日 9時〜20時 土日祝 9時~15時 不定休

ブログ

その人らしい日常を支える訪問鍼灸|意欲・表情・役割が戻っていくプロセス

はりきゅう院 歩(あゆみ)院長

院長:福家洋平

はりきゅう院 歩の院長です

はりきゅう院 歩、院長の福家です。
訪問の現場で施術を続けていると、「この方、本来はもっと動けるし、もっと笑う人だったはずだ」という瞬間に何度も出会います。病気、けが、長い入院生活、環境の変化。こうした要因は身体だけではなく、意欲・表情・言葉のリズム・その人らしさにまで影響します。

訪問鍼灸は、痛みを取るだけの医療ではありません。身体が整っていくにつれて、生活のテンポや人との関わり方が変わり、本人の“らしさ”がゆっくりと戻っていく――そんな変化を支えるケアでもあります。この記事では、意欲・表情・役割が再び動き出すプロセスを、現場の視点から深く掘り下げてお伝えします。

「その人らしさ」は、身体の動きと心の動きが支えている

高齢者施設やご自宅での生活では、身体の不調だけでなく、不安・疲労・環境の制限など、様々な要因が“その人らしさ”を奪ってしまうことがあります。

・以前はよく話していたのに言葉が減った
・笑顔が少なくなった
・自発的な動作が減った
・食事や水分への興味が薄くなった
・「できない」と先に思ってしまう

これらは身体の問題だけでなく、「心のエネルギー」が弱くなっている状態でもあります。人は、身体が重くなると心も重くなり、心が重くなると身体の動きが鈍くなる。双方が影響し合い、日常が小さく縮んでいきます。

訪問鍼灸が“その人らしさ”を引き戻す理由

訪問鍼灸は、単なるツボ刺激ではなく、身体と心の両方を同時に整えるケアです。鍼灸の刺激は筋肉だけでなく、神経系・自律神経・感情の変化にも影響を与えます。

● 深層の筋緊張がゆるむと、身体が“構えなくなる”

痛みが続くと、身体は常に小さく構えた姿勢になります。肩がすくみ、背中が丸まり、呼吸が浅くなる。鍼で深層の緊張が抜けると、この“構え”がふっと緩み、身体が軽く感じられます。

身体の力みが抜けると、心の緊張も自然とほどけます。この変化が、最初の一歩となります。

● 呼吸が深まると、顔の表情が変わる

高齢者の方の多くは、痛みや不安により胸まわりが硬く、呼吸が浅い状態です。呼吸が浅いと、表情筋も硬く、声のトーンが落ちる。胸郭・横隔膜へ鍼を行うと呼吸が深まり、表情が柔らかくなり、声の響きも変わります。

周囲のスタッフが「今日、顔つきが違いますね」と気づくのはこのタイミングです。

● 自律神経が整うと、意欲が戻り始める

意欲の低下は“やる気がない”のではなく、自律神経の乱れによるものが多いです。鍼灸によって副交感神経が優位になると、緊張が緩み、心の余裕が生まれます。「やってみようかな」という前向きな動きが生まれるのは、この心の余裕からです。

● 小さな成功体験が積み重なると、“役割”を思い出す

歩の訪問鍼灸では、施術の後に簡単な生活動作の練習や姿勢の調整も行います。ほんのわずかな改善であっても、「できた」という経験が次の動きを生み、その人がかつて持っていた“役割”を少しずつ取り戻します。

【実例①】表情がほとんどなかった女性が、声を出すようになった 住吉区在住90代女性 K様

施設に入所されている住吉区在住90代女性の方の例です。

長年の痛みと不安が重なり、話しかけても表情に変化が少ない状態でした。肩周囲と胸部の緊張が強く、呼吸が浅いことが大きな要因でした。

深層筋への鍼灸と胸郭まわりの調整を続けると、呼吸のリズムが整い始め、施術後に「今日は気持ちいいね」と笑顔が見られました。スタッフからも「最近よく話してくれます」と声をいただき、ご本人の生活の表情が明らかに変化していきました。

【実例②】「できない」と言っていた男性が、自分から歩き始めた 住吉区在住80代男性 O様

歩行に不安が強く、部屋から出ることを避けていた住吉区在住80代男性の方の例です。

身体の硬さ以上に、“不安による制限”が強く働いている状態でした。鍼灸で足腰の緊張を取ると、翌週には自分から廊下を歩き始め、「歩けるね」と笑顔に。

身体の変化が心に作用し、心の変化が生活に広がる。訪問鍼灸が支えるのは、この流れそのものです。

【実例③】「家族に迷惑をかけたくない」が「また料理がしたい」へ変わった女性 住吉区在住の80代女性 Y様

住吉区在住の80代女性の方の例です。

退院後、活動量が落ち込み、気持ちも沈みがちだった女性。鍼灸で姿勢と呼吸が整い、痛みが軽くなったことで、表情に明るさが戻りました。施術中の会話で「また台所に立ちたい」という言葉が出て、ご家族も驚いておられました。

その後、簡単な動作練習を続け、数週間後には「味噌汁だけやけど、作れたよ」と報告をいただきました。

その人らしさは、動きと意欲が連動して戻っていく

訪問鍼灸の現場で感じるのは、身体が整っていくと意欲が戻り、意欲が戻ると表情と生活が変わるということ。日常生活の中にある「その人らしい行動」が、ひとつずつ再び動き出します。

・自分のペースで歩ける
・好きだったことを少し思い出す
・家族との会話が増える
・食事の楽しみが戻る
・自分の“役割”がよみがえる

これらは医療としての“結果”であり、同時にその人の人生を取り戻すプロセスでもあります。

院長 福家の想い

私は、訪問鍼灸の本質は「その人が、その人らしく戻ることを支える医療」だと考えています。痛みが軽くなることはもちろん大切ですが、その先には“生き方”があります。ほんの少し表情が柔らかくなるだけで、その人の世界は確実に変わります。

動き、声、表情、役割――これらはすべて直線ではなく、螺旋のように少しずつ戻っていくもの。その過程に寄り添い、体の奥の力を引き出せる訪問鍼灸でありたいと考えています。

まとめ

その人らしさは、身体の回復だけでは取り戻せません。身体と心のエネルギーが動き始めて、初めて日常が変わっていきます。訪問鍼灸は、意欲・表情・役割を支えながら、その人が本来持っている力を静かに引き出すケアです。

訪問鍼灸について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
訪問鍼灸について詳しくみる

-ブログ